ヒカマニサイコトロピックの裏話と、僕が音MADに見出した希望

 

投稿しました。

ポシャルル以来の本気動画です。

 

 

 

ヒカマニサイコトロピックの裏話

スケジュール

RPPは今年の3月28日に作ったみたいです。

動画を本格的に作り始めたのは7月4日ですが、今回はREAPERにmp4をぶち込んだので、ある程度の単純な作業がだいぶ簡略化できました。REAPERで動画編集できるっていいね。

 

元ネタ

概ね原曲のストーリーに準拠しています。原曲を知らない人は聴きましょう。

ですが、もう一つの核があります。

これを知らない人が今回の動画を見ると「なんでマッサージが急に出てきたの?」という疑問を持たれるかもしれませんが、それはここから来ているわけです。

 

 

また、これを作るにあたってマネマネサイコトロピックの小説も買いました。曲の解釈に齟齬があったらやだなあと思って確かめる目的で買いましたが、だいたい合っていたので良かったです。

 

目標

今回の動画の基本的な目標は「ヒカマニ外伝のいいところを音MADに取り入れる」ということでした。
「ヒカマニ外伝」は独自の累積的な文化を築いています。オナキンとセックスキンはライバルだとか、「ヒカキンって誰?」「←ウンコマン発見者」とか。
壮大に語ると、その世界観をある程度まとめてここに統合しようという試みが今回の動画です。
知らない人には「?」となる部分ももしかしたらあったかもしれませんが(極力伝えられるように努力はしましたが)、入り浸っている中毒者の方には響くものがあったのではないでしょうか。

 

ストーリー

RED♪Tuberのオナキンは、毎日仕事漬けで忙しい日々を送っていた。

「自分がもう一人いればいいのにな──」

そんなことを考えていたある日、“どんな願いも叶うアプリがある"という噂を聞いたオナキンは、半信半疑で噂のアプリに願いをかける。すると目の前に、もう一人の自分『設xキン』が現れた──!

これ以降のストーリーはまずは動画で確認していただきたく。下でも順を追って解説していきます。

意識したのは、セリフ依存でストーリーを作ることです。
音MADで今主流のストーリーの作り方は映像依存、もっと言えばテキストによる説明文依存が目立っているかと思います。
それらと比較すると、セリフ依存でストーリーを作ることは、今回であれば「ヒカキンさんが実際に発したセリフ」に媒体を縛ることによって、自由度を制限する代わりに、より「素材の味」の活きたストーリーができると思っています。「他の素材であってはならない」という印象が増すということですね。「鬱岡修造」などでも見られる古典的な技法ですが、最近はあまり見かけないですよね。もっと増えてほしい。
セリフに依存したストーリーを作るのは、個人作では「放火マントル」以来でしたが、バグ合作などでかなりやってきました。
そういう点から言えば、僕の経験と強みがはっきり活きた動画になったのではないでしょうか

ちなみにお兄さんの方の素材はあまり出さないようにしています。これは弟の世界の話なので。

 

相変わらず意識しています。

  • Aメロは1番2番ともにエ段の脚韻を基調としています。これは原曲1番も同様の構成になっています。
  • 原曲サビは「ショ」や「ナイヤ」で徹底的な脚韻を踏んでいます。ストーリーの都合で踏み切れない部分もありましたが、ある程度意識できたと思います。(「韻よりも言いたいことを重視するべき」ということが、韻の本場であるラップでも言われているようです。韻はリズムを作る重要な要素である一方、固執しすぎると脈絡のない文が出来上がってしまう危険もあります。要はバランスですよね)
  • 犯しマン⇔ウンコマン

 

対比

また今回はストーリーを強調するうえで対比を積極的に使いました。
対比というとただ対照的にすることのように思えますが、そもそも「どれとどれを対比するのか」をわかりやすくするために、共通の構造を用意することが今回の戦略になっています。共通の構造の下で、大事な部分は対照的にする、ということですね。

  • Aメロの1番と2番で同じところに「毎日~~ます」の構図が現れます。構図を同じにすることによって、真逆のことを言っている対比を強調する意図です。ちなみに「毎日~~ます」は原曲1番でも同じ位置に現れています。
  • 出たー出た! 出たぁ……⇔出ない出ない出ない

 

映像

全体的に彩度落とし気味、コントラスト上げ気味で雰囲気を作っています。

見せ場でないところはいつものヒカマニのように素材そのまま流す感じで、見せ場だけ力を入れる感じにしました。

でもこの見せ場がつらいんだ。ところどころ原曲のPV再現をしましたが、背景作るのがめっちゃしんどかったです。いろんなオブジェが飛び交っている。またテキストも一文字ずつ細かく制御されている。ここは技術というより根気で一個一個をカバーした部分です。

また、こういうストーリーのついた音MADは一般にテキストで内容を構成することが多いと思いますが、今回は説明文は伝わるギリギリまで削っています。「セリフ中心」のストーリーである以上、その構成は説明よりも字幕に任せるべきであるという考えの下です。

 

各論

前奏
  • 原曲PV再現です。きつい。
  • ローション獲得音は途中からいろんな音が混ざってしまいますが、鳴り始めは単音です。そこを引き延ばしてリリースを調整すればいい感じの音になります。
  • ドラム素材もここで唯一動画に出てきます。うんちペッタンボールが壁にぶつかる音はスカルスネアっぽい音なのでお気に入りです。ちなみに動画に出てきていないだけで、動画全体でドラムの音合わせもされています。「おならビートボックス」「バチッ」もタムとしてところどころに出てきます。

 

f:id:ShiMa1296:20200719221221p:plain

ロゴ(エフェクトなし)

 

1番Aメロ・Bメロ
  • Aメロは「ゲームしたい」を中心に、疲れ切ったオナキンを表現しました。Bメロは「マスカキンが自分のTNTN♪にロリを挿しはじめたwww」準拠で、マッサージで「分身できそうな気がする」→セックスキン登場という感じです。
  • 「おります」←「ここに来て限界を感じております

     

 

1番サビ

セックスキンに仕事を押し付けてピーチとヤるオナキン。

  • イミテーション=模倣。ヒカマニ外伝はHikakin Maniaさんの模倣なので、外伝に「イミテーション」を当てました。
  • 桜井政博さんは↓の動画からです。メタ的な視点で解説を入れてくれます。

  • 卵は神様のような存在です。「許してゴメンナサイ」と迷いましたが原曲のほうで。

 

2番Aメロ

暇になった時間を謳歌するオナキン。

 

2番Bメロ

セックスキンは、仕事を自分に押し付けて遊ぶオナキンのことを当然快く思わなかった。そこである計画が始動する……。

  • これ以降の展開は↓の動画を参考にしました。

 

2番サビ

セックスキンにピーチを寝取られてしまったオナキン。ショックでEDになりました。かわいそうに。

 

間奏

EDになってしまったオナキンだが、ここで別の悲劇の始まりである。彼の知らないところで「イミテーション」が増産されていく。このことを知ったオナキンは、「自分でない自分」があまりにも多く流通している事実に恐怖を隠し切れない。

  • ここに出てくるレアキャラはすべて実在の(あるいは実在した)外伝から引っ張っています。ある程度名前の通っているキャラから選びました。

    https://www.nicovideo.jp/mylist/68918059

  • 乗っ取りキン→「オナキンという人格が乗っ取られる」ことの暗示
  • IMITATION GALLERY:マネマネサイコトロピックが収録されているアルバムの名前であり、小説版ではイミテーションを召喚するアプリの名前でもあります。

 

f:id:ShiMa1296:20200719221905p:plain

イミテーション!?ギャラリー(ロゴはトレス)
Cメロ

不吉な夢から目覚めたオナキン。しかし、携帯を目をやるとそこには驚愕の真実が……。

 

大サビ

ペナルティマン紅茶監督の謀略で、自分もYouTuberヒカキンの「イミテーション」であることに気付かされるオナキン。自らの自我が崩壊し始める……。

  • というかお前誰だって思ってる方のためにご説明いたしますと、
  • おそらく並行世界のオナキンです。専門的過ぎてガチな人に変態にされてしまうかわいそうな人ですね。
  • ウンコマン発見者
  • 「今」のシーンをうまく使えたのが個人的にめちゃくちゃ気持ち良かった
  •  

     ペナ紅が自動字幕でしゃべるのは↓の動画から

  • 卵の「HIKAKIN」から肉声の「ヒカキン」へ。卵は伏線として。

 

クライマックス

最終的にはイミテーション同士で闘って決着をつけることになりました。誰が誰?

 

僕が音MADに見出した希望

なんか急にでかいサブタイトルですが。

多くのMAD作者は自分のやっていることにある種の後ろめたさを感じているかと思います。
それがゆえに、「DTMや映像編集の道に進めたとしたら進みたいけど、できないからこんなところにいるんだ」と思いがちなのではないでしょうか?
これは音MADという趣味を他で代替可能なものとしてとらえた見方と言えます。僕もかつてはそうでした。

しかし、僕は同人誌制作やデザインや謎解き制作などいろいろ経験した(本当にちょこっとですが)上で、「やっぱり音MADだな」と積極的に思わざるを得ないのです。

その鍵は恐らく、「素材に異なる意味を付与する」ことだと思います。*1
MADに必要とされる能力の要素の中で、耳コピであればDTM、映像編集であればそのより専門的な道など、いくつかにはある種の「クリーンな道」が存在してしまいます。
しかし、この「素材に異なる意味を付与する」ことは、「クリーンな道」にあたるものが、知っている限りほとんど存在しないのです。
恐らくこの能力で回せる職業があったとしたら、「フェイクニュースの源流」と糾弾されてしまいます。
それゆえにこの能力はMADのようなコラージュでしか日の目を見ることはないわけです。
僕はここに、MADの他では代替不可能な要素として希望を見出しています
だからこそそれを大事にした音MADを作っていきたいと思っています(もちろんどの程度力を入れるかはモチベーション次第ですが)。

ちなみにヒカマニ外伝はこの「素材に異なる意味を付与する」ことに特化したコンテンツだと思います。
映像編集も耳コピもそこまで凝る必要はない(もちろんできるならしてもよい)。
ただ唯一必要なことは、改変や言葉狩りによって「素材に異なる意味を付与する」ことのみ。
古典的なMADに「MADニュース」がありますが、技法としてはそれにかなり近いと思います。
「外伝の良さを音MADに取り入れる」ことは、Hikakin_Maniaの音MADを面白くする鍵なのではないでしょうか。

 

ところで、上で「クリーンな道にあたるものが知る限りほとんど存在しない」と言いましたが、その「数少ない存在」も知っています。その一つがアンジャッシュのお笑いです。


【お笑い】アンジャッシュ「ピーポー君」【鬼畜マスコット】

 

このコントでアンジャッシュ児嶋さんがやっていることって、ある意味MADっぽいと思います。素材にうまく異なる意味が付与されると面白いというのは、結構一般的な笑いのツボなのかもしれません

しかしアンジャッシュ渡部さんがああなってしまった今、お笑い界にこの芸風を継ぐ有力者もいないのではないでしょうか(僕はお笑いに全く詳しくないですが)。
芸人を目指す音MAD作者にはチャンスかもしれないですね。知らんけど。

 

 

www.nicovideo.jp

そういえばアンジャッシュ児嶋さんは音MAD作者でした。

 

*1:R.Mさん流に言えば「文脈」でしょうか。